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  第294号


   心残り
     掲載日 2010/05/09


「変態小野の言ってたことは本当やったんやぁ!」と、思わず声を張り上げて、その場に立ち尽くす。

場所は、某焼肉店。

焼肉店の入口は、しっかりとシャッターが閉じられていた。

実は、この一週間前、変態小野から某焼肉店が営業を止めたということを聞いていた。

しかし、変態小野は嘘つきであるが故に、また、信じたくないが故に、実際に自分の目で確かめようと仕事帰りに立ち寄ったのである。

定休日でもないのにシャッターが閉まっているということ。

もう、これは閉店したという事実を受け止めざるをえなかった。

この店は私と妻の大のお気に入りだった。

昼飯の出前は、殆どこの店で注文していたし、月に2回ぐらいは妻と一緒に行っていたと思う。

ここの焼肉の味は普通だが、定食類や焼肉丼、朝鮮冷麺、ラーメンといったサイドメニューの味は絶品だった。

私が特に気に入ってたのは、焼肉丼だった。

甘辛く濃い味付けといい、他店の丼ぶりより多い量といい、それで600円というリーズナブルな値段といい、胃袋も財布もかなり満足させてくれたものだった。

おそらく、私は焼肉丼をこれまでに何百食と食っているとはずだ。

この店が営業していたのは、3月31日迄。

私達が最後にこの店に行ったのは、娘が生まれる直前の3月4日。

娘が生まれてからは、行ける状態ではなかったので、行かなかったのは仕方がないが、その間"何で、昼飯の出前を注文しなかったのか!"と、今となっては悔やんでしまう。

もうこの店の味は、二度と味わうことは出来ない。

近年では、稀な心残り。

この店のことを思い出す度に、"何でこのような良い店が閉店したのか!"と、私の心はやるせない思いに捉われる。







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