寒行

冷たい水で洗い物をする。

最初は、水の冷たさに物怖じするが、慣れてしまえば問題ない。

ガス代を節約できるわ、指先の感覚を鍛えられるわで、一石二鳥である。

冷たい水で顔を洗う。

やはり最初は、同じく水の冷たさに物怖じしてしまうわけだが、勢いに任せて顔に水を浴びせてしまえば問題ない。

ガス代は節約できるわ、完全に目覚めて気持ちがすっきりするわで、一石二鳥である。

こんなことをもうかれこれ10年以上続けている。

しかし、何故続けるのか?

続ける理由は前述したことではない。

これらのことは、続けることによって生じる副産物である。自分のやっていることを正当化するためだけのものだ。

他の者には、「これは寒行や。寒中水泳と同じく、冷たい水に打たれながら世界平和を祈っとるんや。」などと、アホなことを言っているが、勿論それは嘘である。

私が寒行を続ける理由。

実は、そんなものなんてどこにもない。

ただ、今までやってきたから続けているというだけ。途中で止めたら、軟弱になったような気がするから続けているだけなのである。

私の性格上、自分から止めるのは、おそらく無理。

誰かに「お願いだから止めて!」と、泣きつかれれば、喜んで止めるのだが。


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