拷問

訳あって、変態小野と鳥取県の米子市まで行ってきた。

萩から米子までは、約260㎞の距離。クルマなら5~6時間で行ける。

ところが、変態小野は、全行程をクルマで行かずに、島根県の益田市から電車で行くと言った。

しかも、特急ではなく、各駅停車の”快速”でだ。

変態小野は、寝不足のため、長距離のドライブを嫌がっていたし、新山口~鳥取を結ぶ”スーパー特急まつかぜ”が、午前中と午後に1本づつしか運行しておらず、私達の出発しようとする時刻と合わなかったから、快速電車に乗るのは、やむをえないところではあったのだが。

午前7時半に萩を出発。1時間あまりで、益田市に到着し、予定通りに益田~米子間の9時台の快速電車に乗る。これが、4時間近くに及ぶ長い拷問の始まりとなった。

快速電車の座席は、特急電車のように進行方向を向いているものではなく、向かい合って座るようになっている。また、座席の背もたれは、後ろの席と背中合わせになっているため、角度を調整することが出来ない。

よって、背もたれは、座る面に対して常に垂直である。しかも、クッションも何も効いておらず、ひたすら硬い。

快速電車の始発駅から終着駅まで、通しで乗る者など、私達以外にはおらず、大概の者は2~3駅も乗れば降りるのだから、それで十分なのだろう。

山陰線は、山陽線のように混み合うことはない。学生の通学の時間帯だけが、少し混み合うぐらいのものだ。

私達は、ガラんとした車内で、最初の1時間ぐらいは、いろいろと会話をしながら過ごした。それに飽きると、今度は、窓から流れ行く景色を眺めた。

冬の日本海は、男らしさを感じさせてくれる。荒々しくて、飾りっ気のない景色である。ただ、それだけに、その景色にはすぐに飽きがくる。

会話にも飽き、景色にも飽きたところで、手持ちぶさたとなる。そうなると、それまで大して気にならなかったことが気になりだした。

それは、腰の痛みと、停車時間であった。

長時間、同じ姿勢を続けているから、腰が痛くなるのも当然なのだが、さすがに電車に乗ってから2時間を越えると、それは顕著になった。

後ろに座席を倒すことが出来ないため、前屈みで座ったり、斜めに向いて座ったりしたが、痛みを和らげるのには、大して効果なかった。

そして、そのような痛みに晒されるようになると、気になるのが、停車時間である。

短くても1分、長くて5分の停車時間。そんなのを米子までの30駅で、延々と繰り返すからたまったものではない。

下手すると、次の駅へ行くまでの時間と停車時間が同じくらいのときだってある。

痛みでイライラしているから、”漢塾のイベントやないのに、何でこんな辛い目に遭わないかんのや!”と、つい愚痴も出る。

鉄道マニアなら、このような状況でも苦にならないかもしれないが、私は鉄道マニアではない。これは、拷問以外の何ものでもなかった。

結局、出す必要のない根性を出して、どうにか拷問を乗り切ったものの、長い時間、同じような体勢でいたため、しばらくは腰が痛かった。

 

翌日の帰りも、時間の都合で、またもや”快速”に乗らざるをえなくなり、再度拷問を受けることになったわけだが、このことについて、快速電車での往復をさせてくれた変態小野にも、日に2本しか特急を運行してないJRにも文句を言うつもりはない。

変態小野は、快速電車での移動の辛さを知らなかったわけだし、JRもローカル線であるが故に、採算のことを考えて、運行数を少なくするのも分かるからだ。

だから、今回のことは、運が悪かったのだと、普段出来ない良い経験をさせてもらったのだと、前向きに捉えさせてもらう。

ただしだ。もう二度と山陰線の快速電車には乗らねぇ。こんなのは懲り懲りだ。今度あっちの方へ行く時には、絶対にクルマで行く!


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