ニャラとの出会い

我が家には、2匹の猫がいる。

まずは、先参猫のニャラの話をする。

虎猫のニャラとの出会いは、2年前の6月になる。ニャラが、生後3ヶ月の子猫の時だった。うちのアパートの敷地に迷い込んできたのだ。

現在の肥え太った姿からは想像が及ばない可愛い子猫だった。

それを、うちの子2人と近所の子が追い回していたのだ。

虎猫は、警戒心の強い性格だ。人に慣れるまでには、時間がかかる。

子供たちに追い回されたのに懲りて、どこかに、行ってしまうだろうと予想していたのだが、違った。

子供たちのことを気に入ってしまたのか、そのままうちのアパートのプレハブ倉庫の下に住み着いてしまったのだ。

それからは、うちの子供たちが、自分の小遣いで餌を購入し、毎日、餌と水を与えていた。

おかげで、子供たちには良く懐いていた。が、私には全く懐かなかった。

近づくと、倉庫の下に猛ダッシュで逃げるのだ。

「狩猟で多くの動物を殺めているのが、ニャラには分かるのかもしれない。」そう自分に言い聞かせて納得しようとしたが、心の中に生じた寂しさが消えることはなかった。

 

ニャラの倉庫下での生活が、1ヶ月を迎えようとした日のことだ。この時は、既に私達の距離は相当に縮まっていた。

1週間前くらいからニャラは、階段を上った私達の部屋の玄関前まで来るようになっていた。

それまでは、玄関を開けても中に入ろうとしなかったのが、この日は違った。

「いらっしゃい。」とばかりに玄関を開けると、自分の家に入るような感じで、ゆっくり堂々と中に入ったのだ。

その姿を見た子ども達は、「飼いたい!」と、私に訴えた。

だが、私の出した答えは「No!」だった。

猫が嫌いだったからだ。

そのため、部屋の中に入ったニャラは、しばらく子供たちと遊んだ後に外に出されてしまった。

ニャラを外に出した後に、落ち込む子供たちを見て、私は「これで良かったのか。」と、少し後悔した。

 

事態が急変したのは、その翌日だった。

嫁が帰路の途中に、車の前を横切った猫を轢きそうになったのだ。

幸いにも轢くことはなかったが、車の底部に頭か体をゴツンとぶつけてフラフラしながら道路脇に消えて行ったという。

轢きそうになった猫は、ニャラと同じくらいの大きさの虎猫だったという。

もしかしたら、ニャラかもしれないと思った。

その話を聞いて、私の考えは変わった。

「ニャラを飼おう。」と。

ニャラに感情移入したからか、それ以外に理由があったからか。

それ以外の理由の方が大きかったのかもしれないが、私の考えは、180°変わっていた。

轢きそうになったのが、ニャラだったら動物病院に連れて行こうと。

ニャラでなかったとしても、ニャラを同じような危ない目に遭わせるわけにはいかないと思っていた。

 

次の日、私達の心配をよそにニャラは、元気な姿で私達の前に現れた。

どうやら、轢きそうになった猫はニャラではなかったようだ。

ニャラは、前日と同じく、玄関から悠々と部屋の中に入って来た。これが、ニャラにとっての野良猫暮らしの最後となり、外の世界には出られない家猫暮らしの始まりとなった。

早速、汚れた体を洗い、猫用のトイレを購入した。

翌日には動物病院に連れて行き、去勢を行った。

最初は、よそよそしかったニャラも、家猫暮らし3日目にはとうとう私にも懐いた。

ニャラは、私達の家族となった。

 

あれから1年半が経つが、ニャラが行った最大の功罪。

それは、猫嫌いだった私を無類の猫好きにさせたことだ。

人は、何かとの出会いで変われる。

当然、動物との出会いでも変われる。

私は、ニャラとの出会いで変われた。

変わったのは、猫好きになったことだけではないと思う。

おかげで、更に幸せになった。

 

ニャラ、来てくれてありがとう!

もう、寝るところにも食べることにも、遊び相手にも困ることはない。

これからは、幸せなことしかないよ!

 


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