ミイとの出会い
昨年6月のある嵐の夜だった。
外でニャア!ニャア!鳴き声がする。
鳴き声のかん高さとか細さから、子猫ということが分かった。
うちの中に居るニャラと会話をしている。
私のアパートの部屋は、2階であり、カーテンもしてあるため、外から中は見えない。
それでも、匂いと気配で、部屋の中のニャラの存在が分かるのだろう。
「外は寒いから、中に入れてよ。」「うん、暖かい、僕のうちにおいでよ」
何か、そのようなことを言っているようだった。
その会話は、30分くらい続いた。
外に子猫を見に行こうかと思ったが、止めた。雨が激しく降っていることと、夜中であり面倒であったからだ。
この時は、翌朝にでも様子を見に行こうと思っていた。
翌朝、下まで見に行ったものの、子猫を見付けることは出来なかった。
どこかに行ってしまったようだった。
死んでいなければ良いと思い、その場は諦めた。
事態が動いたのは、もう一日経ってからのことだった。
勤務中に娘から子猫の写真入りのラインが入ったのだ。
隣の子が、「うちの庭で蹲っていたのを見つけたので捕まえた。これ飼ってよ!」と言って、バケツに入れた子猫を我が家に持って来たものらしい。
生後2ヶ月くらいのメスの三毛猫だった。
かなり痩せ細っていた。
隣の子の行為は、我が家には、ニャラという先住猫が居ることを知ってのことだった。
続けて、娘から「子猫を飼って良いか?」との問い合わせのⅬINEが入った。
私の考えは、決まっていたが、その時は返答しなかった。
すぐに家に帰って子猫と対面した。
思ったよりも小さな子猫だった。
何も食べてないのか、元気がない。
しばらくすると、ヨタヨタと動き出し、私達と一緒に見守っていた先住猫のニャラを追いかけ回した。
しかし、それも束の間のことだった。
パタっと倒れて痙攣を起こしたのだ。
このままでは死ぬと感じた。
動物病院に何件が電話をしてみたが、夜遅いため、どこにも繋がらない。
途方に暮れそうになった時に、長男が動物病院の夜間救急電話番号をネットで見つけ出しすことに成功。
電話をかけて、すぐに動物病院に連れて行き、点滴を打ってもらった。
どうやら栄養失調で、低血糖状態になっていたようだ。
家に帰ると、峠は越えたみたいで、子猫の痙攣はおさまっていた。
子猫がスヤスヤ眠っているのを後目に子供たちに、話しかけた。「この子猫を飼おうと思っているから名前をつけて欲しい。」と。
先住猫ニャラに続いて2匹目の猫を飼えると知った子供たちは、喜び、すぐに子猫の名前を考え出した。
子猫の名前は、「ミイ」である。三毛猫だからミイだ。実に安易なネーミングである。
でも、これで良しとした。あまり考え過ぎるのは良くないからだ。
こういうものは、直観に従うに限る。
名前を得たことでミイは、我が家の家族となった。
家族となった翌日からは、体調も回復したからかミイは元気に走り回るようになった。大人しく、行儀良く警戒心の強いニャラとは違い、ミイはお転婆で人懐っこい性格をしている。
人間で言えば社交性抜群だ。
故にミイは、我が家のアイドルである。
ミイについて気になることがある。
我が家に来るまでにどんな生活をしてきたのか、お母さんと何故別れたのか、いつまでお母さんや兄弟と一緒にいたのか、どこで生まれたのか。
そして、一番気になるのが、何故我が家へ来たのかということ。
物言わぬミイにそのことを聞くことは出来ない。
ミイの過去のことは、我が家に来るまで相当辛いめに遭ったであろうことくらいしか分からない。
でも、これからのことは分かる。
もう、幸せなことしかないと。
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