カズ

最近は代表の試合しか見ないものの、12年前にJリーグが始まったばかりの時は、水曜日と土曜日はいつもテレビでJリーグの試合を見ていた。私は生粋のラガーマンなのだが、小学校の頃はサッカーをやっていたということもあり、サッカーも好きなのである。

その時の私の贔屓のチームは鹿島アントラーズだったが、そのライバルチームが読売ベルディーだったということと、日本を代表する選手だったということで、カズの出る試合もよく見ていた。

正直言ってカズは嫌いだった。アントラーズとの試合ではいつも活躍していたし、インタビューでの言動も生意気なように思えて嫌だった。アントラーズ戦で、得点してカズダンスなんてやられた日にゃあ、ぶん殴ってやろうかと思ったほどだ。しかし、38歳を過ぎて未だに現役で頑張っているカズを見て私の考えも変わった。

かつてはJリーグで年間MVPに選ばれ、選手としての頂点を極めたほどの男が、Jリーグのチームではどこもお払い箱となり、二部リーグのチームでの活動を余儀なくされ、しかも今はオーストラリアのクラブチームに期限付で移籍している。

私は期限付というのがよく分からないが、期限付というのは、その間活躍しなかったら、くびになるという条件付の仮契約ことではないかと解釈している。くびになれば、二部とはいえど日本に帰っても戻るチームがないのではないか?それでも、そんなにしてまでオーストラリアのクラブチームに行く必要があるのだろうか?それ以前に、かつては頂点を極めた男が、そんなに屈辱的な思いをしてまで現役にこだわる必要があるのか?全盛期に引退しておけば、衰えた無様な姿を晒すこともなかろう、引退してもカズなら収入のある仕事はいくらでもあるだろう。というのが、一般的な考え方である。私もそのような考え方だったから、何故?とばかり思っていた。

そう疑問に思う中、たまたまテレビで、かつてのベルディの同僚だった武田が話していたのを見た。「カズさんは、代表入りを目指しているんですよ。」と。それを聞いて「ええっ!マジ?」と思った。いや、私だけでなく誰でもそう思うだろう。カズは来年の2月には39歳になるんですよ!早生まれだから来年の4月以降で40歳になる人と学年は同じなんですよ!中学生ぐらいの子供がいてもおかしくない年齢なんですよ!

そんな肉体的にも衰えているカズが代表入りを狙っているなんて、それを聞いたら殆どの者が「マジ?」と思うのは当然だろう。だけど、どんな辛い立場に立たされようと、現役にこだわり続けるカズを見ていたら、それも頷ける。全ては、ワールドカップに日本代表として出場するためのことなのだ。

98年に日本がワールドカップに出場した時、ここまで日本サッカー界を牽引してきたカズは代表から外れた。ドーハの悲劇は、私も生で見ていた。あのロスタイムの一点さえなければ、カズはワールドカップに出場できていた。

間違いなくドーハの悲劇も代表から外されたことも、カズにとっては忘れえぬ出来事であろう。あれさえなければ、岡田がカズを代表から外さなければ、カズはワールドカップに出場できていたのだ。ワールドカップに出場するために日本サッカーを牽引し、サッカーに全てを捧げてきたカズのワールドカップ出場に対する思いは、私なんかにはとても想像がつかない。

過去に縛られながらも、どうしてもワールドカップに出場したいというカズの執念が選択したのが、代表入りを狙うということだったのかもしれない。そのために、海外で活躍して代表入りをアピールするという意図も読み取れないでもないが、そんなのは大したことではない。大事なのは、現役を続けるということなのだ。

正直言って、全盛期の年齢を10歳も過ぎての代表入りは、限りなく不可能に近いと思う。でも、希望はある。全盛期に比べると、スピードもスタミナも体のキレも全てが衰えたし、それらのものは、今の若手と比べるべくもない。だが、カズには長年のサッカー人生で培った豊富な経験がある。そして何よりも、徹底的に自己管理しているだけあって、己の体のことを知り尽くしている。私が監督だったら、若手への影響を考えて、ムードメーカーのゴンと一緒に代表に入れることだろう。

戦力的には厳しいし、実情はそんなことを言ってられないというのも分かるが、ジーコ監督には、その辺をよく考慮していただきたいと個人的には思っている。だってカズがいなければ、今の日本サッカーはなかったんだから。そして、できれば3戦目のブラジル戦で、せめて後半の残り15分ぐらいからでも試合に出場させれば最高だと思うのだが。

カズに現役を続けさせているのは、ワールドカップに出場し、あの芝生の上でプレーするという執念である。代表入りという大儀がなくなれば、現役を続ける意味もなくなるのかもしれないし、年齢的にももう選手生命の終りはすぐそこまで来ていると言っていい。今、ケガでもすれば、もうアウチである。カズのプレーを見られなくなるのは寂しいが、それは仕方ないことである。だから、最後までカズの動向を見届けようと思っている。

諦めない挑戦し続ける心、強い精神力、そして強い執念、この漢から学ぶことは多い。残り少ない選手生命を最後の望みに向けて燃やし尽くせ!代表入りすることを心から祈る。がんばれカズ!


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