模様替え
高校の卒業間近のことだったと思う。当時、パゲの家には親がうるさく言わないこともあって、パゲが家にいようと、いまいと関係なくいろいろな奴が出入りしていた。そして、丁度、パゲがバイト中で私とアホの末がパゲの部屋でたむろっていた時のことだ。
ただテレビを見ているだけなのも暇なので、何か面白いことがないかと思案していると、ふと思いついたのだ。パゲの部屋の模様替えをしてパゲを驚かしてやろうということを。そのことをアホの末に話すと、アホの末はすぐにその話にとびついて、さっそくやろうということになった。
最初は、小物類だけを動かしたり、並びかえたりするだけのつもりだったが、やっていくうちにあれもこれも動かそうと、どんどんやっていることがエスカレートし、終いにはタンスなどの大きい家具類も全て動かしてしまった。
4時間もの長き時間を費やして完成したのは、最初の部屋とは、家具の配置も小物の配置も全く異なった、ある意味違う人の部屋だった。使いやすさと居心地の良さと、雰囲気の良さを追求した部屋の出来には私もアホの末も心底満足したものだ。
あとは、パゲが帰ってきた時にどういう反応を示すかを楽しみだったが、私達がやったことがバレてはいけないので、パゲが帰ってくる前にさっさと部屋を立ち去った。そして、次の日、パゲの家に行ってわざとらしく、「何じゃ!こりゃあ!部屋が全然変わっとるやないかぁ!」と平静を装って言ったのだ。
「お前らがやったんやろ!」とパゲは一言だけ言った。パゲの部屋には、いろいろな奴が出入りすれど、私達しかそのようなバカなことをする奴はいないということを見抜いていたみたいなのだ。バレては面白くないと思ったが、パゲが言うには、前日の晩に部屋に入ったら、自分の部屋が180°違う部屋にコーディネイトされていたことには口をあんぐりするぐらい驚いたらしい。よってバレはしたが、私達のパゲを驚かせるという試みは見事成功したので、アホの末とガッツポーズをしてお互いの健闘を称え合ったものだった。
パゲは現在、結婚して両親と子供2人と住んでおり、勝手に家に上がりこむわけにもいかないので、同じことをするのは不可能である。他に同じことをできそうな奴もいないし、あれは間違いなく一生に一度の貴重な経験になってしまった。
このことを思い出すたびに、アホなことをしたものだと笑ってしまう。歳をとって、自分の置かれた境遇は違えど、あの頃と中身は変わっていない。同じことは二度とできないが、また今度は違うことで人をアッと驚かせて笑い転げたいものである。
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