風紋
日本一の起伏を誇る鳥取砂丘には、風紋という風が作る砂模様がある。これは、朝早く、人が砂丘に足を踏み入れない時しか見れないという。正確に言えば、ある程度の風が吹いていれば、早朝でなくても見れるのだが、人が砂丘に足を踏み入れると、風紋を踏み荒らしてしまうので、見にくくなるというわけだ。
この風紋、風の吹き方によって、いろいろな顔を見せてくれるらしい。私達が砂丘に入った時は、人の足跡の中に埋もれながらも、細かいヒダが連続して作られており、その模様は、まるで洗濯板の洗濯物を擦る面のデコボコの様に見えた。
ガイドさんが言うには、ある女性の作家が、鳥取砂丘を舞台にした小説の中で、風紋のことを「その風紋のヒダは、女の心のヒダを映し出しているようで、なんともせつなく悲しい美しさがある。」と表現しているらしい。なんともロマンティックな表現をするものである。それに比べて、風紋のことを洗濯板と表現するとは、やはり私には、そういうものの欠片もないのかもしれない。
この作家は、女性であるからして、風紋を女性的な見方をしているが、男である私はやはり見方が違う。風紋を作る風が、高さ50mもの砂丘を作ることからも、また、人に踏み荒らされても時間が経てば、必ず新たな風紋ができることからも男性的な力強さを感じるのである。
風紋を見て何を感じるかは人それぞれに違う。ここを訪れる人の数だけ、感じ方はあるのかもしれない。もし、再度ここを訪れることがあれば、その時の私は、それを見て何を思うだろうか?風紋は人の心を映し出す、不思議な砂模様である。
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