友達
「晴れてたら良かったのになあ!」今にも泣き出しそうな曇り空を見ながらお互いにつぶやいた。だが、ブワリヤは、天気が悪いながらも、ここの景色が気に入っているようだった。「グレイト!ビューティフル!」と、何度も口にしていた。
それを聞いて、連れてきて良かったと思ったのだが、私の心境は複雑だった。ここへ連れてくるのは、ブワリヤと出会った時から約束していた。しかし、今回ようやく実現したもののこれが最初で最後のドライブになってしまったからだ 。
ブワリヤとアニーは訳あって、急に萩から出なければならなくなった。その理由は私も知っている。彼らに全く非は無い。すごく理不尽な理由によるものだ。そのことを彼らから聞いたのは、2週間前。私も友人達と一緒に、どうにか彼らを萩で暮らせるようにと、力を尽くしたが無理だった。
結局、萩に滞在するのを諦めて、長野県の友人のところで世話になることを聞いたのが一昨日の晩。お互いに落胆した状態で、ここに来たわけだ。
ブワリヤを慰める、そして自分の寂しさを紛らわすつもりだったのだが、ここへ来たのは正に正解だった。天気が悪いながらも美しい自然の中で私達はお互いのことをよく話すことができた。初めて出会った頃よりは、お互いに良く意志の疎通ができるようになっていたこともあって、思うままに話したいことを話した。
ブワリヤの好きなボクシングのこと、お互いの嫁さんのこと、友人のこと、家族のこと、これからのこと等々。私達はたくさんのことを話した。おかげで、気づいた時には2時間が経過していた。
彼との会話の中で、私が最も感動したのは、ブワリヤが「あなたは大切な友達。私は、萩が好き。またいつか萩に戻ってきてあなたに会いたい。」と言ってくれたことだった。それを聞いて私は、「私はずっと萩にいる。いつでも会いにきてくれ。」と言ったが、すぐに胸が詰って言葉がでなくなってしまった。
彼とは、たった3ヶ月の付き合いでしかなかったが、筋トレやアームレスリング、プライベートでの付き合いを通して確実に友情を育めていたようだ。友達になれる者とは、過ごした時間も性別も年齢も国籍も何もかも関係なく友達になれる。全ては縁である。そのことは、今までの経験を通して分かってはいたのだが、今回のことを通して、またより一層実感することができた。
彼らとはどうだろう?また会うことができるのだろうか?私は会いたいと思っているのだが、こればかりは分からない。ただ、私達は友情という絆で繋がった友達である。この絆は、どこへ行こうと会うことがなかろうと切れることはない。
「あなたは大切な友達。」と言ってくれたブワリヤの言葉を私は忘れない。その言葉以上のものを私は知らない。私はその言葉を貰ったおかげで寂しさは未だにあるものの、ネガティブな気持ちはもう一切なくなった。それどころか、妙な安心感さえある。なぜなら、私達は友達なのだから。
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