冷たい雨

仕事を終えて帰ろうとすると、外は雨だった。生まれつき待つことは嫌いな性分。また、職場には極力長く居たくなかったので、雨の降りしきる中に飛び出した。

激しい雨だったということもあり、すぐに服は水びたしになった。ハンドルを持つ手は、雨の冷たさでかじかんで痛くなった。

当たり前のことであるが、冬の雨は冷たい。少しでも早く、それから逃れて家に戻ろうと、家路を急ぐ私の頭に、ふと何年か前の記憶がよぎった。

一人、チャリンコで博多へ行った時のことだ。あの時は、雪まじりの大雨だった。12時間も雪と雨に打たれ続けて、手はしもやけになり、関節も痛めてしまった。冷え切った体を温めるには、一時間も湯船に浸からなければならなかった。

もう二度とあのような思いはしたくないと思った。

あの時のシチュエーションと似ていたから、思い出したのだろうが、辛さのレベルは雲泥の差だった。走りながら、”このぐらいを辛いとか嫌だと思うようになるなんて、ヤワになったな。”と思った。

そうなったのは、加齢のせいではない。自分が変わったからだった。

あの時は、思いついたらすぐ実行していた。後先のことを考えずに行動していた。それが良くも悪くもあったが、勢いはあった。

最近は、先ず考えてから行動するため、実行できないことが多かったし、勢いも削がれていた。変に理屈っぽくもなっていた。

このままでは、良くないと思った。

“また、あの頃の気持ちに戻っていろいろやってみようか!”

冷たい雨は、そんな気持ちにさせてくれた。

 


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