理由

私のアパートの台所からは、海が見える。海から50mしか離れてないから、見えて当然なのだが、いつも炊事をしながら海を眺めて楽しんでいる。

冬の荒れ狂う海も素敵だし、晴れた日の昼下がりの穏やかな海も素敵だ。

海は、季節によっても、時間帯によっても全く異なる姿を見せてくれるので、毎日見ていて飽きることはない。

おかげで、本来であれば面倒臭いはずの炊事も苦にならずにできている。

そして、毎日海を見ていて気付いたのが、天気が良い日には、岸壁のコンクリートや車止めのポールに腰掛けて、じっくりと海を眺める人が多いということ。

毎日、必ず何人かは見かける。

若い男女が一人で、物思いに耽っているのを見ると、失恋でもしたのかなと思うし、年寄りが一人で同じようなことをしているのを見ると、そろそろお迎えが来ることを考えているのかなと、いたらない思いを巡らせてしまう。

まあ、誰が何を考えていようと、どうでも良いことだが、海を見ていると気持ちが穏やかになるのだろうと思う。また、どこまでも続く、その雄大さにも魅せられているもかもしれない。

次に生まれ変わるとしても、海のあるところに生まれ変わりたいと思うほど、私は海が好きである。

その好きな海を、毎日、間近に眺められるということが、もう10年以上もこのボロアパートに住み続けている一番の理由である。


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