負け犬

かりんとうを食っている時に、足元からねっとり絡みつくような視線を感じた。

その視線は、愛犬のチャーリーからのものだった。

こいつは、いつも人が食っているものを欲しがるのだ。

いつもなら、無視してやらない。もしくは、やるフリをしてやらずにいたぶる。

だが、この日の私は、すこぶる機嫌が良かったので、かりんとうの食いくさしを恵んでやることにした。

さっそく、「かりんとうやるから来いいや!」と、チャーリーを呼んだ。

でも、こいつは来ない。

私のことが怖くて来ないのが分かっているから、チャーリの前にかりんとうを放り投げた。

が、こいつは遠慮して食わない。

それを見かねた母ちゃんが、かりんとうを拾って口元まで運んでやった。

それでも、こいつは遠慮して食わない。

一心にかりんとうだけを見つめて、ヨダレまでたらしているのだから、欲しくないわけがない。

ただ、私が見ていると、どうしても遠慮して食うことが出来ないみたいであった。

それが分かっていたから、裏口の上り口近くにある餌皿にそれを放りこみ、わざと外へ出て、こいつの様子を見ることにした。

私が上がり口から、靴を履きに下に下りた時のことだ。

ダダーッ!と、餌皿の1m手前まで走ってきた。

そして、外へ出て、ドアを閉めようとした時のことだ。

私が外へ出て、もう戻って来ないことを確信したのか、ついに餌皿にまで来て、かりんとうを食うやいなや、ダッシュで逃げたのだ。

思ったとおりの行動だった。

こうなることは分かっていたが、あまりにも思ったとおりの行動だったので、可笑しかった。

邪魔したりはしないから、堂々と私の目の前で食えばいいのに。

それが出来ないとは。

弱っちい奴。


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