かける言葉

テルさん夫妻が萩に来られ、私のアパートで宴会を行った時のことだ。当然ながら、漢塾参謀であるアホの末もここに参加していた。いつもはどちらかというと、食う方に徹するアホの末だが、この時は食うよりも飲む方に徹し、しかもいつにも増してよく喋った。

確かにテルさん夫妻を囲む宴会では、飲まない私でも、いつにないくらい楽しかった。”この時間が永遠に続いて欲しい!”とさえ思ったほどだ。

それはアホの末も同じはず。しかし、それを加味してもアホの末はいつもより飲むペースが早く、あまりにもハイテンション過ぎるように見えた。

私にはそうなる原因が分かっていたから、敢えてそのことには触れずに、時折こいつのことを観察していた。

アホの末は本当によく笑い、よく飲む。心から宴会を楽しんでいる様子だった。これだけ楽しんでいるのを傍で見るのは、とても気持ちが良いし、見ている方も嬉しくなる。

だが同時に、”この楽しい場に至るまでに、いろいろと辛いことがあったんだな。”と想像すると、すごくこいつが可哀想に思えた。

いずれはトンネルを抜けられるだろうが、今は出口が見えない。そんな状況下では、希望が持てないし、また時間が確保出来ないことから、ストレスを発散することも出来ない。

だから、悲しくなるほどにこいつの振る舞いは理解することが出来た。

・・・もうこいつに”頑張れ!”なんて言えない。

敢えて言うなら”まだまだ先は長ぇぞ!”と。

私がこいつにかけられる言葉はこれだけである。


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