蕎麦を食いに行こうと、妻と商店街のアーケードの中を通っていた時のことだ。

私達以外には数人ぐらいしか往来の無い閑散としたアーケードの中で私達のすぐ横をチャリンコに乗った若者が通り過ぎた。

私は、そのことを別に気にもしてないから、若者の顔を良く見ることはしなかった。

妻は、サングラスをかけていることぐらいは分かったらしいが、別にマジマジ見るようなことはしなかったようだ。

だが、若者が通り過ぎて2~3秒した時である。私達の前を歩いていた妻の知り合いが、「あのチャリンコの人は中田よ~っ!」と言ったのである。

それを聞いて、「中田って、あのサッカーの元日本代表の中田 英寿?何で中田がこんなとこにおるん?」と、私達。

「極秘情報で予め中田がお忍びで萩に来ているということは聞いていたの!○○屋敷という旅館に泊まっているらしいのよ!サイン貰いたかったなぁ!」と、知り合い。

「へぇ~!中田のようなスターでも萩のような田舎に来るんやねぇ~!」「パッと見、どこにでもおりそうな兄ちゃんにしか見えんのやけど。」とか言い合いながら、皆で去り行く中田の後姿を見えなくなるまで見つめていた。

面と向かって会ったとか、話をしたとかではないし、単にすれ違っただけなのだけど、こんな思いもかけないところですれ違うなんて、微少ではあるがこれも何かの縁やな。


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