運び屋
トゥルルルルルッ!
携帯が鳴る。
時は某日の午前8時前。
いつも通りの時間だ。
電話の主は、SASUKEに出場したことで、今や萩の町では時の人になったあの男である。
「例のものを持ってきやしたぜ!今回のはとびきり上物ですぜ!旦那ぁ!」
「そうか、そうか!とびきりの上物か!でかしたぞ!さっそく俺の部屋まで持って来てくれ。」
しばらくして、ピンポーンッ!と、チャイムが鳴る。
ドアを開けると、猿に似ているというよりは、猿そのものである電話の男が立っていた。
猿顔の男は、しきりに段ボールの中身を私に見せたがる。
私は、猿顔の男の催促に応えて、さっそく段ボールの中を覗き込んだ。
猿顔の男が自慢するだけあって、色といい、脂肪のサシの入り具合といい、新鮮さといい、最高のブツであった。
猿顔の男のなかなかの良い仕事ぶりに感心した私は、正規の報酬とは別にアメ玉を何個か恵んでやった。
猿顔の男は、予想外の報酬に喜んで、「旦那ぁ~。また、いつでも仕事を言いつけてくだせぇ!今度もいいブツ仕入れてきますぜぇ!」と、アメ玉を頬張りながら言った。
マスさんに匹敵する猿顔の男の良い仕事ぶり。
トンカツにステーキに肉じゃが、その他の豚肉料理にもかかせない、萩ブランドの“むつみ豚。”
この“むつみ豚”の運び屋が、猿顔の男の仕事だ。
何ヶ月かに一度の猿顔の男の仕事のおかげで、我が家の食卓は潤っている。
これからも頼むぞ!山猿!
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