不思議な出来事

1週間くらい前のことである。

その日は嫁さんが夜勤で、私は一人でお留守番だった。

いつものように戸締りと消灯の確認をし、寝床に入った。

その日は、いつもよりハードに筋トレをしたこともあり、すぐに眠りに就いたように思う。

夜中の2時過ぎであろうか、何故かパッと目が覚めた。

別に便所へ行きたいわけでもなかったので、再度眠りに就こうとした時のことだ。何の気なしに襖の方へ目をやると、襖の隙間から明かりが漏れているのが見えたのである。

襖の向こうの台所に誰かいるようだった。

準夜勤であれば、嫁の帰宅はこの時間なので、”おっ!帰ったな!”と思い、「お疲れぇ!」と声をかけた。

だが、返事はない。

いつもなら「ただいまぁ~。」と、お疲れの様子で返事をするところ。”だのに何故返事をしない?”と思い、今度は声を大きくして「お疲れぇ!」と、声をかけた。

ところが、今度も返事はない。

“何でこいつは返事せんのやろ?風呂でも入っとるんかな?”と、疑問に思いながらも、再度声をかけるのも襖を開けてその姿を確認するのも面倒臭かったので、再々度眠りに就こうとした時である。

気付かなくて良いことを気付いたのである。

“今日は、こいつ準夜勤ではなく夜勤やから朝までは帰って来るはずはないんや!”と。

私は大雑把な性格ながらも、特定のことに関しては慎重の上に慎重を重ねる男である。特に家の施錠と消灯はこれまでに一度も忘れたことがない。この日も寝る前にそれらのことは、しっかりと確実に行っていた。

だのに台所には電気が点いている。

この現実を直視すると怖くなった。

布団の中で考えた。泥棒の可能性もあるし、お化けの可能性もある。

怖いからこのまま朝まで眠りに就くことも出来るが、私の性格上それは無理だ。

怖くとも、確認しなければ気が済まない。

“仕方ねぇ。確認だけするか。”そう決心すると、布団から出て恐る恐る襖を開けてみた。

誰も居ない。

玄関へ行ってみた。

鍵もフックもきちんとかかっている。

他の部屋へも行ってみた。

やはり誰も居ない。

と、なるとお化けの仕業という可能性が濃厚になるが、その結論に辿り着く前に、もう一度、自分に過失がないか確かめた。

わずか2~3時間前のことであるから、消灯した事は良く覚えている。確かに、台所の電気は消した。

目が覚める前に実は一度起きており、便所へ行く際に台所の電気を点けて、それを消し忘れたということも考えたが、どう思い出そうとしても、それは思い出せないから、それは有り得ない。

夢遊病者のように、眠ったまま電気を点けたことも考えられるが、私はそのような病を患ってないので、それも有り得ない。

よって、”これはお化けの仕業である。”との自分なりの結論に落ち着いた。

“しかし、何で台所の電気なんて点けるかねぇ。うちの電気代を浪費させたいのかねぇ。やるなら、もっとお化けらしいことをすればいいのに。ケチなお化けや!”と、余裕をかますも、そこは生来の臆病者である私である。

それから朝までは、怖くて眠れなかったのは言うまでもない。

 

 

 

 


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