縁あって野球
汗で目が沁みる。前が良く見えねえ。手で汗を拭っても、次から次へと汗が吹き出てくる。夏も既に終盤を迎え、陽射しも幾ばくかはやわらかくなったとはいえ、それでも体力と水分を奪うのに充分な殺傷力の高い陽射しが、我が身を照りつける。
ドキドキ、ドキドキ、心臓の心拍数は平常より、少し早い。「来るな!来るな!俺のところへ来るな!俺のところへ打つんじゃねえ!」心の中で必死に叫ぶ。
立ち位置を何度も変える。落ち着きがない。あまり打ちそうにない奴なので、少し前に出る。この位置なら大丈夫!と、安心したところで、カキーン!と左中間にでかい当たり。俺のはるか頭上を越えていきやがった。
「シャアッ!」の掛け声と共に、帽子を投げ捨て、追跡開始。100m12秒台半ばの走り。あっという間に追いつく。矢のような返球。どうにか3塁で止めた。
回は変わる。先程の反省から、かなり後に下がる。これでどんな飛球がきても大丈夫。しかし、自信はあるものの、やはり自分のところへは来てほしくない。
カキーン!また俺のところへ来やがった。今度は、俺の真正面だ。余裕だぜ!と思い、ロケットダッシュで前へでる。ん?何か違うぞ!全然後ろやんけ!
「おどりゃあ!」すぐに振り返って追跡開始。今度は、12秒台前半の走り。あっという間に追いつく。レーザービームのような返球。今度は2塁で止めた。
2つともホームへは帰らせなかった。どうだ!この走り。どうだ!この強肩と思ったが、2つとも俺のエラーだ。さっさと捕っちまえば、無駄な体力を使うことなく、すぐにチェンジになっていた。
エラーして皆に迷惑をかけたにも関わらず、「漢は、自分の尻拭いは自分でやるのさ!」と自分のプレーに満足して、余韻に浸っている俺。本当にお得な性格。そんなことだから、いつまで経っても野球が下手だ。
縁あって、やることになった、17年ぶりの野球。何の活躍もできなかったが、久々の野球は楽しかった。
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