四国八十八ヶ所自転車遍路 ~土佐之国を終えて~
今回の遍路は、かなり動いた。実働3日半という強行日程で330㎞も進んだ。頑張って動きまくったおかげで、どうにか高知県内の16ヶ所の寺のうち、目標より1ヶ所多い、14ヶ所をまわることができた。おかげで、肉体的にもきつかった。高知県は長い県だから、それも当然かもしれないが、何せ寺から寺の距離が長いのだ。
今回、納経した寺では、寺から寺への距離が、30㎞台の寺が2つ、50㎞台の寺が1つ、一番長い寺だと、84㎞もある。それ以外の寺でも平均で8~9㎞はある。しかも、険しい山の中の遍路道を通らなければならないこともあり、歩を進めるのは、非常に困難だった。
おまけに、現地に着いた日は、台風が近づいていることもあり、かなりの大雨、強風で、先に進むという気持ちもかなり萎えた。それでも、先に進まなければ、目標の36番の寺まで辿り着くことができないので、尻に鞭打って、しこしこ歩を進めた。
走りながら、自転車を押しながら、抱えて歩きながら、たくさんのことを考えた。頭の中に出てくるのは、今までの自分の在り方を反省することばかりだった。環境が違うからか、一つのことに集中していたからかは、分からないが、この時ばかりは、非常に素直な自分になっていた。
それと、今回の遍路で、私を悩ましたのが、「マツケンサンバ」の軽快なメロディとリズムだった。24番の納経所のテレビで、これを初めて見てから、最終日まで、ずっと頭から離れなかった。これにはやられた。これのおかげで、気持ち的に楽しくなったため、厳しい道程が、そんなに苦にならなかったのだが、自分を見つめるという作業の邪魔をしていたことは確かだ。それだけマツケンサンバが素晴らしいのか、私が馬鹿なのかどちらかだと思うが、マツケンサンバとの出会いは良い出会いだった。
勿論、マツケンサンバだけではなく、人間との出会いもあった。たくさんの人と出会ったが、中でも若い2人との出会いが特に印象に残った。雪躊寺の通夜堂で共に飲み食いし、語り合い、騒いだりしたことは楽しかった。久々に子供のようになってはしゃいだ、あの晩のことは、一生忘れないだろう。
前回の遍路でも、たくさんの宝を持ち帰ったが、人との出会いほど、貴重な宝はない。その点では、今回も貴重な宝を持ち帰ったといえよう。しかも、今回は、マツケンサンバとの出会いというおまけ付き。十分過ぎるほどの宝だ。
残るは51ヶ所、旅は着実に進んでいる。帰りの船中、旅が進んでいることに喜びを感じつつ、この楽しい旅もいつかは終わると思うと、少し寂しくなった。でも、終わらせる寂しさよりも、終わらせた時の感動の方が遥かに大きいはず。だから、旅を終わらせるために、また行く。次回は、来年の春だ。
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