JUDAS PRIEST

JUDAS PRIESTのライブに福岡のZEPPへ行ってきた。JUDAS PRIESTとは、ヘビーメタル・ハードロック界の帝王と呼ばれ、活動歴は30年を越える伝説的なバンドである。日本でも常に武道館などのアリーナ級の会場でライブを行う彼らだが、満員に客が入っても2千人ぐらいのキャパであるZEPPでライブを行うことは非常に珍しいことである。

また、今回のライブはメタル界では、メタルゴッドと尊敬の念を込めて呼ばれる伝説のボーカリストのロブが12年ぶりにバンドに復帰してのライブだけに、フロントの4人の平均年齢が55歳を越える高年齢で、おそらくこれが最後の来日と思われるだけに格別の思いで彼らのライブに臨んだのだった。

2階を除いてオールスタンディングの会場フロアは、人が一杯で身動きがとれないほどであった。開演の1時間前にフロアに入場し、ステージからわずか2mばかりしか離れてない絶好のビューポイントで、開演するのをひたすら待つ。その間、もうすぐ高校生の頃から憧れていた彼らに会えるのだというドキドキした気持ちで、落ち着きがなかった。

こういうライブの常である開演時間の遅れもなく、ライブはきっちり予定時刻に始まった。彼らとのファーストコンタクトは、当然、定番中の定番曲であるHellion~Electric Eyeだった。

何という楽器の出音の凄さ、何というロブの声量の、感情移入の凄まじさ、アルバムで聞くのとは全く違うものがそこにはあった。何百回、何千回と聴きまくって、楽曲の隅々まで記憶しているこの曲だが、ライブで聴いた瞬間、予想していた以上の感動に全身の毛が逆立った。

この曲で、私のハートは完全に彼らにキャッチされてしまった。その後も彼らの30年を越える歴史を見せ付けるかのように数々の名曲が演奏されていく。夢見心地とは正にこのこと。ロブがそのハゲた頭に血管を浮き上がらせて熱唱するさまを、KKやグレンがフィンガーボードになめらかに指を滑らせていくさまをうっとりと見入る。

周りは、飛んだり跳ねたり、手を振り上げたり、一緒に歌ったりで騒然としている。思わず暴れ回りたくなる衝動に駆られるが、そんなことをしたら、じっくり鑑賞して記憶に鮮明に焼き付けることが出来なくなってしまうので、手を振り上げてサビを一緒に歌うぐらいにとどめておく。

しかし、その抑えていた衝動も超名曲Painkillerの前では、すぐに崩れ去った。この曲を聴いて普通の神経でいられるはずもない。Go on a Trip!演奏が始まった瞬間にあっちの世界へ行ってしまった。呪術師やシャーマンが、激しい太鼓のリズムに合わせて踊りまくり、トランス状態に入るのと同じような感覚であろうか。この時は、全ての思考がけしとんでいた。

曲が終わってハッ!と我に帰る。こっちの世界へ帰ってくるとともに、あまりもの曲の凄さに「何ちゅうストロングでパワフルな曲や!」とひたすら感激するのだった。

そして極めつけは、日本公演では26年ぶりに演奏される幻の名曲Exiterだった。全く予想だにしない嬉しい選曲にフロアは沸きあがった。この曲で盛り上がらねえ奴はファンじゃねえとばかりに、殆どの奴らが暴れまくって、フロアは修羅場と化した。演奏が終わっても、興奮してまだ暴れまわっている奴もいた。正にExiterという名に相応しい名曲だった。

アンコールは、お決まりの曲の3連発。私も他の観客も疲れることを知らない。最後の最後までノリまくり、一緒にサビを歌った。最後は、KKとグレンがギターをクロスさせてその間にロブが立ってお決まりのポーズを決めるというものだった。これがまた格好良かったのだが、これでこの素晴らしいライブも終りだということを悟ると、途端に寂しくなった。

時間にして2時間。大変密度の濃い時間ではあったが、もっと聴きたいというのが本音であった。しかし、彼らも高齢のため、質の高いパフォーマンスを提供できるのはこれが限度であろうと想像できたので、諦めもついた。

こんなにライブで感動したのも、ジャンルは違うが、バイオリニストの川畠さんのコンサート以来のことだった。

おそらく、私にとって最初で最後のJUDAS PRIESTのライブ。ヘビーメタルって、ハードロックって本当に素晴らしい音楽だと再認識できたライブだった。彼らのようなオリジナリティとヘビーメタルに対する情熱と信念に溢れたバンドは今後出てくることはあるまい。そういう意味でも、賞味期限が残り少ない伝説的なバンドである彼らのライブをこの目で見たという、生きた証人になれたことを心より光栄に思うのだ。

まだ熱気冷めやらぬ会場を後にしたその足は、この日のライブを語り明かすために隣のハードロックカフェに向かっていた。


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