ノータッチ
俺のところへ飛んでこい!頼むから来てくれ!」頭の中で何度も叫ぶ。昨年とは逆の思い。カキーン!「あれっ!俺のところじゃない!アウト、チェンジ!」
う~ん、どうしたことだろう。でも、自分まで打順が回ればいいと思い、打球が飛んでこなかったことを諦める。しかし、私まで順番がまわるには間に7人もバッターがいる。これまでの回のような調子ならば、私に打順がまわることはまず、ない。
「頼むから塁に出てくれ!デッドボールでもファアボールでも振り逃げでもいいから出てくれ!お願いだ!」ドキドキ、ドキドキ、固唾を呑んで打席を見守る。
最後のバッターが、サードゴロを打った。「頼む!落としてくれ!捕ったとしても次は、お願いだからファーストに暴投だ!」だが、私の願いも虚しく、サードは、エラーすることもなくファーストに暴投をすることもなく、試合を締めくくった。私達は敗れた。
私がこれだけ、自分のところに打球が飛んでくるのにも、自分に打席がまわってくることにこだわったのにも訳がある。実は、最終回から選手交代で、試合に出場していたため、これだけ球を触るのにこだわっていたのだ。結局、一度も球に触ることなく、1年ぶりの野球は終わった。
試合に出場させていただいたことは有難かったが、何もできなかったことには不満が残った。もっと早く、交代させてくれたら良かったのにとか、こんな中途半端な交代をさせるぐらいなら、最初から交代させるなよとか、いろいろと文句も出る。
しかし、グランドに立てたことで、野球独特の緊張感は味わうことができた。それが味わえただけでも、試合に出場した価値はあったといえよう。
決して、面白かったとは言えない今回の野球の試合。でも、何もできなかったことで、逆に思い出には残った。
普段は、野球に関心のない私だが、おかげで野球をまたやりたいと思った。だからこそ、また、こういう野球ができる機会があることを願っている。
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