災難

「うおほっ!」目の前の惨状に思わず活字にしにくい声がでた。マイカーのリヤガラスが粉々に砕けていたのだ。砕けていたのはマイカーだけではなかった。アパートの駐車場に停めてある他の二台のクルマのリヤガラスとフロントガラスも粉々に砕かれていたのだ。

いずれのクルマのガラスも石で割られており、マイカーともう一台のクルマの車内にはかなり大きい石がそのまま残っていた。

夜中にドーン!という大きい音が鳴り、他の住人のクルマの防犯ブザーが鳴った原因はこれだったのかと、この時集まったアパートの住人同志で納得した。当時私は、その音で叩き起こされ、すぐに窓から外を見たが、誰も居ないし何も変わったことがないようなので、外に出ることもなくすぐにまた眠りに就いた。他の住人もその音で叩き起こされたようだが、やはり窓から覗いただけで外には出ることもなかったらしい。

事が重大なことであると分かったのは、朝になってからだった。「○○さん大変です!」と、他の住人の方に呼ばれ、外に出てみると、マイカーが先述のようになっていたわけだ。

しかし、一体誰がこんなことを?警察に事情聴取されながら誰もがそう思った。誰にも思い当たる節がないから、おそらく悪戯のように思われるのだが、それにしても大胆かつ悪質な悪戯である。こんな田舎町でこんなことが起こるなんて信じられないし、また実際に自分の身にこんなことが起こるなんてなおさら信じられなくもある。

まあ、誰かが傷つけられたとかでなくクルマというモノの破損だけで済んだから、それだけでも不幸中の幸いといったところだが、この卑劣な行為は絶対に許すことはできない。

現在、その時間に怪しい者を見たという目撃証言もなく、手がかりといえば車内と駐車場に転がっていた3つの石に残っているかもしれない指紋だけである。それだけの物的証拠で犯人を特定するのは限りなく難しいものと思われるが、私は全く悲観はしていない。犯人は必ず捕まる、もしくはそれ相応の代償を負うことになると確信している。なぜなら、その場では見つからずに済んでも自分の行った行為に対しては、必ずそれに等しい報いを受けるようになるからだ。逃げたつもりでも絶対に逃げれっこないのだ。

このことは、もう済んだことである。だから今は怒りもおさまった。が、未だに「こんなことが!」と、自分の身に起こったことを信じられないでもいる。その事実を叩きつけられるのは、修理の請求書を目にした時であろう。その時、私の怒りも再燃するに違いない。とりあえずは、今日から寝室に金属バットを常備である。

 


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