預かりもの
「こちらは、○○○です。この番号は使われておりません。」聞きなれたこのアナウンスを聞いた時、耳を疑った。もしやと思い、もう一度電話した。が、結果は同じだった。電話はつながらない。
都合がつけば、この連休に預かりものである二人の自転車を長野県まで届けに行くかもしれないと、ブワリヤ達と別れる時に約束していた。しかし、私の都合がつかないので、「今回はそちらに行けない。」と言おうと、アニーの携帯に電話したのだ。
最後に彼らから電話がかかってきたのが、今年に入ってすぐぐらいのことだった。その時、ブワリヤは二人とも仕事が見つかり、自動車も手に入れたと語っていた。それを聞いて、向こうでの生活も落ち着いたものだと思っていた。
電話がつながらないということは、電話番号を変えたか、それとも二人とも自分の国に帰ったのか。どちらとも考えられるが、電話番号を変えたとは考えにくいので、どちらかというと、お互いの故郷に帰った可能性の方が高い。
ブワリヤがカナダに滞在するビザを取得するには、お金と時間がかかるので、あと2年は日本に滞在する予定だと言っていたのだが、それを繰上げて帰国するとは何かあったのだろうか?だが、いくら推測しようとも、本当のところ何があったのかは分からない。
長野県の住所は教えてもらっているが、その住所は居候先の住所だし、万が一、彼らが日本に滞在しているとしても、アパートなどを借りて住所が変わっている可能性もある。居るか居ないか分からない者を探しに長野県まで行くつもりはないので、これで、彼らとは連絡が取れなくなった。
もう少し早く連絡していれば、連絡がついたかもしれないと思うと、悔いも残るが、こうなってしまったものは仕方がない。これから先、彼らと再会できるかどうかは分からないが、いつ彼らが戻ってきてもいいように気が済むまで自転車は処分せずに預かっておくつもりだ。
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