失踪

家に帰ると、部屋の中が片付いていて、サッパリしたなと思うことがある。大掃除でもしたのかな?と思い、嫁さんに聞くと、「何もしていない。」と言う。私の気のせいかと思い、その場は「まっ!いいか!」と、やり過ごす。

お気に入りの服を探すが、無い時がある。いくら探しても見つからないので、嫁さんに聞くと、「知らない!」と言う。「おお!そうか!」と、その場はやり過ごす。

読みたい本を探すが、無いことがある。嫁さんに聞くと、「知らない!」と言う。「あっ、そう!」と、その場はやり過ごす。

履きたい靴を探すが無い時がある。嫁さんに聞くと、「知らない!」と言う。「ふう~ん!」と言いそうになるが、「ちょっと待てよ!」と、踏みとどまる。

靴は、きちんと下駄箱の中に入れておいたはず。それが無いのはおかしい。さしもの鈍感な私も「これはもしや!」

と思い、すぐさま嫁さんに、これはどうしたことかと問い質した。

最初は、知らぬ存ぜぬで通していた嫁さんも、しつこいぐらいに問い質す私に根負けしたか、全部白状した。

何と!今まで私が探しても無いと思ったモノは、全て捨てたのだとか。さすがにこれには私も激怒した。

以前から、こういうことはしばしばあった。その都度、私のモノは、私に捨てても良いかどうかの確認をとってから捨てるようにと言ってきた。嫁さんも、その時は「次からそうする。」と反省した様子で言っていた。が、どうやらそれが守られてなかったようである。

最も被害を受けたのは、私の服で、短パンとジーンズと何枚かのTシャツだけ残して、他の服は全て捨てられていた。理由は、私がTシャツ以外は着ないからとのことで、服以外に捨てたモノも、普段の生活の中で殆ど使うことがないからとのことだった。

嫁さんは、家に不要なモノを置きたがらない性分である。それが分かっていたから、その理由を聞いて、「そうやね!うん!うん!」と納得したが、それだけで私の気が納まるわけがなかった。

しかし、嫁さんも私の扱いを良く心得ている。私の捨てたモノの代わりにTシャツを何枚か買うという約束で、その場の悶着をうまく納めた。

あれからだいぶ時間が経った。お詫びのTシャツを買ってもらってないばかりか、更に私のモノが無くなっているような気がする。


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