祝!復活

正直、私は格闘技というものに興味がなくなっていた。

14年前にアメリカで”金網内で闘う異種格闘技”としてスタートした現在の総合格闘技。

当時は、ルールも”目つぶし””金的への打撃”が禁止されていたぐらいで、闘うスタイルは喧嘩に近いものだった。

ところが、現在はどうだ。異種格闘技が総合格闘技として洗練されていくにしたがって、ルールも整備され、喧嘩というよりは殆どスポーツといっても差し支えないものになってしまった。

喧嘩からスポーツへの変化。これが、私が興味を無くした理由だ。

だから、もう格闘技を見るために会場に足を運ぶことも、テレビ観戦することもないと思っていた。

ところがである。そうもいかなくなったのだ。

あの男が復活するという。

その男の名は”舟木 誠勝”。格闘家の中では私が最も好きだった男だ。

新日本プロレス、UWF、を経て格闘技団体パンクラスを設立。7年もの間エースとしてパンクラスを牽引。2000年にヒクソン・グレイシーに敗れてから引退し、今日まで至る。

時おり熱くなり過ぎて失言してしまう傾向はあったが、武士道を現代で再現しているような生き方といい、その価値観といい、彼は私にとっては男の中の男であった。

“ヒクソン・グレーシーに負けたら引退、絶対に復活することはない!”と言い放ち、実際に負けて引退したものだから、彼の性格上、絶対に復活することはないと思っていた。

だが、ある日、ヤフーのスポーツ欄を見ていたら、年末の格闘イベント”Dynamaite”に船木が出場すると書いてあるではないか。

復活した理由について、たらたらと書いてあったが、そんなのはどうでも良かった。如何なる理由があれ、復活することで約束を破ることになるのは間違いないからだ。

“どこかの何度も引退して、何度も復活するプロレスラーみたいやな!”と最初に思ったが、船木に幻滅するどころか、逆に嬉しかった。

何故なら、あの船木に”嘘をつく”、”約束を破る”という人間らしさが見られたのもそうだし、何よりも、もう二度と見ることができないと思っていた船木の闘いをまた見ることができるからだった。

7年のブランクは、傷めていたパーツを癒すには十分過ぎる時間だったかもしれないが、総合格闘技が進化していく中で、その間、闘いを経験していないというのは致命傷である。

相手を見るまでもなく、船木が不利であることに変わりはないだろう。

まあ、でも私にとって勝ち負けは二の次である。再び船木の勇姿が見れるだけで十分なのだから。大晦日の晩は、久々にテレビにかじりつくことになりそうだ。


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