思いでの場所

その前を通ると必ず立ち止まる場所がある。

そしていつも、主のいない店のドアの向こうに思いを馳せる。

高校を卒業した時は、ラグビー部で集まってお別れ会をやった。

大学の時は、帰省する度にエテやラグビー部の仲間、親しい友人達と何度も飲みに行った。

彼女を連れて行ったこともあった。

口説こうと思った女性を連れて行ったこともあった。

人生経験がとてつもなく豊富なエテの母ちゃんに”恋の悩み”や”人生相談”をしてもらったこともあった。

就職して萩に帰ってからは、”いつでも行ける”という考えがあり、エテが帰った時ぐらいしか行かなかったが、それでも年に1回以上は必ず行っていた。

店を閉める最後の日には、可愛い後輩を連れて行った。

余程の特別なことが無い限り、自分から酒を口にすることが無い私が、ここでは自分からすすんで酒を飲んでいた。

ここでは、心ゆくまで、笑い、騒ぎ、語り合った。

居心地の良かった場所。

青春の一部が詰まった場所。

忘れ得ない思い出の場所。

店が無くなって今年で5年。

思い出の場所が無くなった寂しさは、今でも変わらない。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です