続き

実家で午後11時半まで時間を潰した私は、”こいつ許さん!”と、何度も心の中で叫びながら、チャリンコをとばした。

アパートには10分ほどで到着。部屋に明かりが点いていることで、嫁が起きたことを悟った。

鍵を開けた後に、ドキドキしながらドアノブを引く。今度は、ガコーンッ!という鈍い音はしない。どうやらフックは解除されていたようであった。

部屋の中に入るやいなや、開口一番、「お前、ええ加減にせえよ!携帯に何十回も電話して、しかも何十回もピンポン押しとるんやから起きれや!」と、近所迷惑になるので、控えめな声で叫んだ。

それからも更に畳み掛ける。

「ええか、これが南極とか北極でのことやったら俺は凍え死んどるぞ!これが砂漠の中でのことやったら、俺は干からびて死んどるぞ!」

「ええか、これがトラやライオンがおるところでのことやったら、部屋の中に入れん俺は食われてしまうんど!」と。

それを聞いた嫁は、「ごめん。ゴリが帰って来ること忘れとった。でも、ゴリの言うようなことがあるわけないじゃん。」と、開き直った。

あまり反省している様子でなかった。

カチンッ!ときた私は、「フザけんな!俺は、事の重大さをお前に分かって欲しいから、分かり易い例えを用いて訴えとるんやないか。お前は軽く考えとるけど、もしそのような状況であれば、本当に俺は死んでしまうんど!」と、興奮気味に言った。

熱く語る私を嫁は鬱陶しく思ったのか、「ごめん私が悪かったから。今度、焼肉屋で奢ってあげるから勘弁して。」と、言ってきた。

それを聞いた私は、「焼肉ぐらいで、許せるかいや!もので釣ろうとするなよ!」と、一喝して違う部屋に行った。

だが、5分もしないうちに”仲直りに焼肉奢ってもらった方が良いかも。”と心変わりしたため、嫁のいる部屋に戻り、「さっきは俺が言い過ぎた。仕方ねえけど、焼肉で許してやるわ。もうすんなよ。」と、言い、とりあえずは仲直りした。

もので釣られて許す、すぐに怒りが冷める私も悪いのだが、性根の無いこいつはおそらくまた同じことをやる。それは、これまでに何度もやっていることで証明済みだ。

もし、今度やったら・・・。

その時は、また奢ってもらおう。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です