足りないもの

ある日、変態小野が私に言った。

「職場の本庁の方へ行くのに(私達の職場は、本庁と離れている。)、まだ半袖で行って大丈夫ですかね?何月まで半袖でいいんですかね?」と。

それを聞いた私は、「お前なら何月でも大丈夫や!変態ということがみんなに周知されとるから、何をやっても許されるいや!裸で行っても大丈夫と思うぞ!」と、答えた。

「そうですかねぇ。そうだったらいいんですけど!」

私がそう言ったことで自信がついたのか、変態小野は照れながらも安堵の表情をして去って行った。

おかしなことを私に聞くものだと思った。

職場の誰からも変態として周知されているのに、こいつなら何をやっても許されるのに、何を今さら他人の目など気にするのか。

変態なら変態らしく堂々としていればよいのにだ。

ただ、変態とはいえどこいつも一応は人間である。今回のように、たまに自分のやっていることが正しいのか、他人に変な目で見られやしないか心が揺らぐことがあるみたいだ。

そんな時は必ずと言っていいほど、私に助言を求めてくる。

助言を求められれば、面倒臭いけど適当に助言してやる。

そうすると自信を取り戻す。

いつもこの繰り返しである。

故に現在は私のおかげで変態としてのアイデンティティーを保っているようなもの。

今のこいつに足りないのは、変態としての自信と自覚である。


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